「最近やたら水を飲むな」「猫砂の固まりが前より大きい気がする」。この2つが同時に起きているとき、猫の体では静かに何かが進んでいることがあります。多飲多尿(たいんたにょう)は、猫のシニア期に増える病気のかなり早い段階から出てくるサインで、見た目は元気なままのことも珍しくありません。この記事では、どこからが「飲みすぎ」なのかを数字で示し、家でできる確認方法と、動物病院での検査・治療にかかる費用の目安を整理します。
健康な猫の飲水量は、一般的に体重1kgあたり1日20〜45mLとされています。体重別に換算すると次のようになります。
| 体重 | 通常の飲水量(1日) | 多飲を疑うライン |
|---|---|---|
| 3kg | 60〜135mL | 135mL超 |
| 4kg | 80〜180mL | 180mL超 |
| 5kg | 100〜225mL | 225mL超 |
| 6kg | 120〜270mL | 270mL超 |
ここで重要なのがフードの種類です。ウェットフード主体の猫は食事から水分の7〜8割を摂るため、器から飲む量はもともと少なめ。逆にドライフード主体の猫はよく飲みます。ドライフード中心の猫が急に器の水を飲む量が増えた、という変化のほうが意味を持ちます。
尿のほうは、猫砂の固まりの数と大きさが手がかりになります。健康な成猫の排尿は1日2〜4回が目安。これが5回以上になったり、1回あたりの固まりがこぶし大からそれ以上に育っているなら、尿量が増えている可能性があります。
多飲多尿そのものは病名ではなく、体が水分バランスを保てなくなっているサインです。猫で頻度が高いのは次のような背景です。
猫でもっとも多い原因の一つ。腎臓が尿を濃縮する力を失うと、薄い尿が大量に出て、それを補うために水を飲む、という順番で症状が出ます。腎機能が3割以下まで落ちてから症状が見え始めるため、「気づいたときにはかなり進んでいた」となりやすい病気です。
10歳前後から増える内分泌の病気。代謝が過剰に上がるため、よく食べるのに痩せる、落ち着きがなくなる、毛づやが悪くなる、といった変化を伴うことがあります。
肥満気味の中高齢の猫でリスクが上がります。血糖が高い状態が続くと糖が尿に漏れ、水を引っ張って尿量が増えます。食欲があるのに体重が落ちる点が特徴的です。
子宮蓄膿症(避妊していないメス)、肝疾患、高カルシウム血症、ステロイドや利尿剤の投与中なども多飲多尿を起こします。原因によって必要な検査も治療も変わるため、自己判断で絞り込まず、獣医師に相談するのが確実です。
「よく飲む気がする」という主観だけで受診するより、次の3つを記録して持っていくと診察が一段速く進みます。
体重が落ちてきている場合は、猫の体重減少が続くときの原因と検査費用もあわせて確認しておくと、検査の流れがイメージしやすくなります。
多飲多尿の診療は「原因を突き止める検査」と「見つかった病気の治療」の2段階に分かれます。以下は当社が症状カテゴリ別に整理した参考レンジです。
| 段階 | 主な内容 | 費用レンジ | よくある価格帯 |
|---|---|---|---|
| 初回の絞り込み | 触診+尿検査 | 5,000〜15,000円 | 8,000〜12,000円 |
| 基本検査 | 血液検査+尿検査+レントゲン | 15,000〜40,000円 | 20,000〜30,000円 |
| シニア精密検査 | 血液検査+エコー+心電図 | 30,000〜80,000円 | 40,000〜60,000円 |
| 原因判明・軽度 | 血液検査+食事療法の指導 | 10,000〜30,000円 | 15,000〜25,000円 |
| 原因判明・中等度 | 甲状腺検査+エコー+内服薬 | 20,000〜80,000円 | 30,000〜50,000円 |
| 重度 | 入院+精密検査+慢性疾患治療 | 80,000〜300,000円 | 120,000〜200,000円 |
見落としやすいのがここから先の継続費用です。慢性腎臓病や甲状腺の病気は「治して終わり」ではなく、療法食と定期的な血液検査を長く続ける管理型の病気になります。3〜6か月ごとの再検査に1回1〜3万円、療法食に月3,000〜6,000円といった支出が、その後何年も続くと考えておくのが現実的です。
出典:日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」および PETPETLIFE 治療費データをもとに、Withねこが症状カテゴリ別に整理した参考レンジです。実際の金額は動物病院・地域・重症度・検査内容によって大きく変動します。
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次のいずれかに当てはまるなら、数日以内の受診をおすすめします。
一方、次のような場合は環境要因の可能性があります。1〜2週間の記録を続けて、変化が戻るか確認してもよいでしょう。
ただし、これらの心当たりがあっても体重減少・嘔吐・元気消失のいずれかを伴う場合は、様子見にせず受診してください。
多飲多尿を入り口に見つかる病気の多くは、進行度によって必要な医療が段階的に重くなります。通院と内服で管理できる段階なら年間で数万円規模、入院と集中管理が必要な段階に入ると一度で10万円を超えることも珍しくありません。差を生むのは、飼い主が「なんとなく水をよく飲む」という違和感に気づいてから受診までにかかった時間です。
7歳を過ぎたら、症状がなくても年1回の血液検査+尿検査を習慣にしておくと、変化を数値で追えるようになります。シニア期に増える医療費全体の見通しは、シニア猫の医療費は何歳から上がるのかで年齢別に整理しています。
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気温が上がる時期に飲水量が増えること自体は自然な反応です。判断のポイントは尿量も一緒に増えているか。暑さによる飲水増加では、汗をかかない猫でも呼吸や体表からの水分喪失が増えるため、尿量はそこまで増えません。飲水も尿も両方増えているなら、季節のせいと決めつけないほうが安全です。
飲水量の個別測定は現実的に難しいので、体重の推移とトイレの使用状況で追うのが実用的です。全頭の体重を月1回記録し、1頭だけ落ちていないかを見ます。可能であればトイレを個体別に分けるか、見守りカメラで排尿回数を確認する方法もあります。健康診断のタイミングで全頭の血液・尿検査を受けるのが、結局は一番確実です。
いいえ。多飲は体が失った水分を補おうとしている結果なので、水を制限すると急速に脱水し、危険な状態になります。飲みたいだけ飲めるようにしたまま、動物病院で原因を調べてください。
監修:Withねこ合同会社(第一アイペット損害保険代理店)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、獣医学的な診断・治療を目的とするものではありません。記載した費用はあくまで参考レンジで、実際の金額は動物病院・地域・症状の程度・検査内容によって大きく異なります。愛猫の体調に気になる変化がある場合は、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。