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猫がお尻を床にこすりつける|治療費の目安

作成者: |2026/08/30 1:34

この記事の要点

  • 猫がお尻を床にこすりつける(スクーティング)背景で最も多いのは 肛門嚢(こうもんのう)のトラブルです。肛門の左右 4 時・8 時の方向にある一対の袋に分泌物がたまり、排出されずに不快感が出ている状態が代表的です。
  • 費用の目安は、肛門嚢を絞る処置だけで済む軽度なら 5,000〜10,000 円、炎症を起こして内服・外用が必要な中等度で 15,000〜25,000 円、破裂して外科処置と通院が必要になると 30,000〜60,000 円が中心帯です(変動あり)。
  • 24 時間以内に受診したいのは、肛門周囲が赤黒く腫れている・血や膿が出ている・座るのを嫌がる・触ると激しく怒るのいずれかがあるときです。放置すると皮膚が破れ、費用も治療期間も一段階上がります。

床に座ったまま、後ろ足で体を押して前に進む——いわゆる「おしり歩き」を見て、笑ってしまった経験のある方は多いと思います。ただ、この動きは猫にとって遊びではありません。お尻のどこかに不快感があり、それをこすって解消しようとしているサインです。この記事では、原因として何が考えられるか、様子を見てよいのはどこまでか、そして 実際にかかる検査・処置の費用レンジを整理します。

お尻を気にする猫が訴えていること

猫の肛門の左右には、肛門嚢と呼ばれる小さな袋が一対あります。ここには独特のにおいを持つ分泌物がたまり、通常は排便のたびに便に押されて少しずつ排出されます。個体差が大きく、生涯まったく問題が起きない猫もいれば、定期的に処置が必要な猫もいます。

排出がうまくいかないと、分泌物が濃くなって袋が張り、猫は 「お尻の奥がむずがゆい・重い」という感覚を持ちます。これを解消しようとして出るのが、床にこすりつける動き、お尻を執拗になめる、しっぽの付け根を噛む、といった行動です。

猫は犬に比べてこのトラブルの頻度が低いとされますが、起きないわけではありません。特に、便がやわらかい状態が続いている猫、体重が増えて自力での排出が弱くなっている猫、長毛で肛門周囲が汚れやすい猫では起こりやすくなります。

考えられる原因は 5 つに整理できる

以下はいずれも「可能性」であり、見た目だけで確定できるものではありません。順番は、動物病院で実際に多く確認される順のイメージです。

考えられることいっしょに出やすいサイン緊急度
肛門嚢に分泌物がたまっているお尻歩き、しっぽの付け根をなめる、独特のにおい低〜中
肛門嚢が炎症・化膿している肛門の横が赤く腫れる、触ると怒る、座りたがらない中〜高
肛門嚢が破裂して皮膚に穴が開いた血や膿が出る、毛が固まる、明らかな痛み
寄生虫・消化器トラブル軟便や下痢が続く、体重が増えない、毛づやの低下
皮膚炎・アレルギーが肛門周囲に出ている他の場所もかゆがる、脱毛、フケ

便の状態が関わっているケースは見落とされがちです。やわらかい便が続くと肛門嚢が押されず、分泌物が残りやすくなります。お尻を気にする行動と軟便がセットで起きているなら、原因は肛門だけではない可能性があります。トイレの外で排便するようになった場合も、痛みが背景にあることがあります(猫がうんちだけトイレでしない|原因と直し方)。

受診の目安——どこまで様子を見てよいか

判断は「見た目」と「時間」の 2 軸で考えると迷いません。

すぐ(当日〜24 時間以内)受診したい

  • 肛門の横が 赤く、あるいは赤黒く腫れている
  • 血・膿・透明でない液が出ている
  • 座るのを避ける、座ってもすぐ立つ
  • お尻に触ろうとすると 普段と違う強さで怒る・鳴く
  • 肛門周囲の毛が固まり、皮膚が見えている

2〜3 日以内に相談したい

  • お尻歩きが 1 日に何度も出る
  • しっぽの付け根や肛門周囲を 執拗になめ続ける
  • 軟便・下痢が 3 日以上続いている
  • 独特の生臭いにおいが部屋に残る

記録して様子を見てよい

  • お尻歩きが 数日に 1 回程度で、腫れも出血もない
  • 食欲・便の状態・活動量が普段どおり

様子を見る場合も、いつ・1 日に何回その動きが出たかをメモしておいてください。受診したとき、獣医師が最初に聞く情報です。動画が 1 本あると、説明にかかる時間が大きく短縮されます。

検査・処置の内容と費用の目安

以下は症状カテゴリ別に整理した参考レンジです。実際の金額は動物病院・地域・重症度・検査内容によって大きく変わります。

状態主な内容中心帯
軽度(分泌物がたまっているだけ)初診料 + 肛門嚢の圧迫排出 + 外用薬5,000〜10,000 円3,000〜15,000 円
中等度(炎症を起こしている)皮膚・分泌物の検査 + 内服薬 + 洗浄処置15,000〜25,000 円10,000〜40,000 円
破裂・化膿(皮膚に穴が開いた)切開・洗浄・縫合 + 抗生剤 + 通院処置30,000〜60,000 円20,000〜80,000 円
慢性化・繰り返す場合アレルギー検査 + 長期治療、外科的な検討50,000〜100,000 円30,000〜150,000 円
原因の切り分けが必要なとき血液検査 + 便検査 + レントゲン20,000〜30,000 円15,000〜40,000 円

出典:日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」および PETPETLIFE 治療費データをもとに、Withねこが症状カテゴリ別に整理した参考レンジです。

金額の差を生むのは 「皮膚が破れる前か、後か」です。圧迫排出だけで済む段階なら 1 回の通院で終わり、費用も 1 万円に届きません。破裂してからは、切開・洗浄・抗生剤に加えて 数日おきの通院処置が 1〜2 週間続くのが一般的で、合計額は 5 倍前後に開きます。「たかがお尻」で先延ばしにしたときのコストが、ここに出ます。

皮膚のかゆみが全身に出ている場合は、肛門周囲だけの問題ではないこともあります(猫が体を掻きむしる — 原因と治療費)。慢性的に繰り返すケースでは通院が長期化しやすく、想定より総額が伸びます。医療費の備えを見直すなら、こうした「治りきらずに続くタイプ」の出費を含めて考えておくと現実的です(ペット保険「うちの子」の詳細を見る)。

家でできること・やってはいけないこと

できること

  1. 便の状態を整える——やわらかい便が続いているなら、そこが起点になっている可能性があります。フードを急に変えず、7 日以上かけて切り替えるのが基本です(猫のフードの切り替え方|7日間の手順
  2. 体重を管理する——体格が大きくなるほど自力での排出が弱くなりやすいとされます
  3. 長毛なら肛門周囲の毛を短く保つ——汚れがたまりにくくなり、異常にも気づきやすくなります
  4. 回数を記録する——「週に何回お尻歩きをしたか」だけで、悪化しているかどうかが判断できます

やってはいけないこと

  • 自己流で肛門嚢を絞る——力の向きを誤ると袋を傷つけ、内側から破裂させることがあります。猫は皮膚が薄く、犬より難易度が高い処置です。最初は必ず動物病院で、必要かどうかも含めて確認してください
  • 人用の軟膏や消毒液を塗る——猫はなめ取ります。成分によっては中毒の原因になります
  • 患部をシャワーで強く洗う——炎症が進んでいる状態では刺激になります
  • 「におうから」とお尻を拭き続ける——摩擦で皮膚を傷めます。汚れは湿らせたコットンで軽く押さえる程度に

繰り返す猫のつき合い方

一度トラブルを起こした猫は、再発することが少なくありません。この場合に有効なのは 「予防的に定期処置を受ける」という考え方です。動物病院で自分の猫の間隔(多くは 1〜3 か月に 1 回が目安として案内されます)を確認し、爪切りや体重測定と同じ枠で通うようにすると、破裂まで進むケースをかなり減らせます。1 回あたりの費用は軽度の範囲で収まるため、破裂後の処置と比べれば負担は小さくなります。

あわせて、年 1 回の健康診断で便検査を含めておくと、寄生虫や消化器の背景要因を早めに拾えます(猫の健康診断は何をいくら?費用と検査項目の目安)。

よくある質問

Q. お尻歩きをしていますが、腫れも出血もありません。すぐ病院に行くべきですか?

腫れ・出血・強い痛みのいずれもなく、食欲と便の状態が普段どおりであれば、その日のうちに駆け込む必要は通常ありません。ただし放置してよいという意味ではなく、観察の期間を決めてください。目安は 2〜3 日です。この間、1 日に何回その動きが出たかを数え、便の硬さも記録します。回数が減っていくなら一時的なものだった可能性が高く、横ばい、あるいは増えているなら受診の段階です。加えて、次のいずれかが途中で出てきたら、期間を待たずに予約を入れてください。肛門の横が赤くなってきた、お尻をなめる時間が明らかに増えた、座り方が変わった、独特のにおいが部屋に残るようになった。なお、この行動は肛門嚢以外が原因のこともあります。寄生虫、消化器の不調、皮膚のアレルギーなどが背景にある場合は、お尻だけを処置しても再発します。受診時には便を持参すると、その場で検査に回せて切り分けが早くなります。採取は当日の新しいものが理想で、ラップに包んで冷蔵しておけば数時間は使えます。

Q. 肛門嚢絞りは自宅でやってもよいと聞きましたが、本当ですか?

犬では自宅ケアとして案内されることがありますが、猫では最初から自己判断で行うことをおすすめしません。理由は 3 つあります。1 つめは構造の問題で、猫の肛門嚢は犬より小さく、皮膚も薄いため、力の向きを誤ると袋そのものや周囲の組織を傷つけやすいこと。内側から破ってしまうと、外から見える傷がないまま炎症だけが進むことがあります。2 つめは、そもそも 絞る必要があるかどうかの判断が難しいことです。分泌物がたまっていない猫を無理に絞ると、刺激で炎症を起こす原因になります。3 つめは、押さえ方の問題です。嫌がる猫を保定しようとして、飼い主が咬まれる・引っかかれる事故が起きやすい処置でもあります。猫の口内には細菌が多く、人の手の咬傷は腫れやすいことが知られています。まずは動物病院で、必要性・頻度・自宅で行ってよいかを確認してください。「この子は自宅でも大丈夫」と判断された場合に限り、実際にやり方を見せてもらってから始めるのが安全な順番です。

Q. 一度治りましたが、また同じ動きをしています。毎回同じ費用がかかりますか?

再発の程度によります。早い段階で受診できていれば、圧迫排出と外用薬で済むため 1 回あたり 5,000〜10,000 円の範囲に収まることが多いです。問題は、前回治ったという安心から発見が遅れ、炎症や破裂まで進んでしまう場合で、このときは 30,000〜60,000 円の帯に入り、さらに数日おきの通院処置が続きます。つまり 再発そのものより、気づくまでの日数が費用を決めます。繰り返すタイプだと分かっている猫では、次の 3 つを習慣にしてください。第一に、定期的な処置の間隔をかかりつけで決めておくこと。第二に、週 1 回、お尻周辺を目視で確認すること(触らず、毛の汚れと皮膚の色を見るだけで十分です)。第三に、お尻歩きが出た日をカレンダーに印だけつけること。印の間隔が詰まってきたら、腫れる前に受診できます。なお、慢性的に繰り返す背景として食物アレルギーや消化器の不調が隠れていることもあり、その場合は原因側の治療が長期化し、年間の医療費が想定より膨らみやすくなります。継続的な通院が見込まれる猫では、医療費の備え方も含めて一度整理しておくとよいでしょう(公式ページで補償の内容を確認する)。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を目的とするものではありません。記載の金額は参考レンジであり、実際の費用は動物病院・地域・症状によって変動します。気になる症状がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。

監修・情報整理:Withねこ合同会社(第一アイペット損害保険代理店)