猛暑が一段落してほっとする時期ですが、ノミとマダニにとってはここからが最盛期です。真夏の高温はむしろノミの活動を抑える方向に働き、気温が下がって湿度が残る8月下旬から10月にかけて、一気に数が増えます。「夏を乗り切ったから予防はもういい」と考えていると、いちばん多い時期を無防備で迎えることになります。この記事では、残暑から秋にかけての予防の考え方と、室内飼いの猫に必要な対策を具体的にまとめます。
ノミが卵から成虫になるまでのサイクルは、条件がそろえば2〜3週間ほどです。この「条件」が、気温13〜27℃、湿度70%前後。日本の残暑から秋の環境はこの範囲にぴったり収まります。
真夏の35℃を超えるような屋外はむしろノミには過酷で、繁殖のペースが落ちます。ところが8月下旬に気温が下がり始めると、蓄えられていた卵やさなぎが一斉に羽化し、個体数が跳ね上がります。これが「夏の終わりに急にノミが増える」と感じる理由です。
マダニも同様に、春と秋に活動の山があります。草むらや公園の茂み、河川敷などに潜んでおり、散歩する犬だけでなく、そこを通った人の衣類にも付着します。
「うちは外に出さないから大丈夫」というのが、この時期にいちばん多い誤解です。実際の侵入経路は次のようなものです。
猫自身が外に出るかどうかではなく、家に出入りするものすべてが経路になりうる、と考えるのが実態に近い見方です。
ノミの成虫は素早く動くため、見つけるのは簡単ではありません。手がかりになるのは、成虫よりも「痕跡」です。
ノミの糞を探すのが、家庭でできる最も確実な方法です。目の細かいノミ取りコームで、背中から腰、しっぽの付け根を中心にとかします。黒い砂粒のようなものが取れたら、湿らせた白いティッシュの上に置いてみてください。にじんで赤茶色に広がれば、それはノミの糞です(消化された血液のため)。ただの汚れなら色は変わりません。
行動面では、次のようなサインが手がかりになります。
マダニの場合は、吸血して膨らんだ状態でイボのように見えます。顔まわり、耳、首、指の間に付きやすい部位があります。見つけても無理に引き抜かないでください。口の部分が皮膚に残って炎症を起こすことがあります。動物病院で除去してもらうのが確実です。
掻きむしりが続いている場合は、ノミ以外の皮膚トラブルの可能性もあります。猫が体を掻きむしるときの原因と治療費もあわせて確認してみてください。
予防薬には、首の後ろに垂らすスポットタイプと、口から与える錠剤・おやつタイプがあります。猫では、投薬が難しい個体が多いことからスポットタイプが選ばれることが一般的です。
選ぶときに押さえておきたい点が3つあります。
1つ目は、必ず猫用を使うこと。犬用のノミ予防薬には、猫に重い中毒を起こす成分(ペルメトリンなど)が含まれているものがあります。犬と猫を同居させている家庭では、犬に使った直後に猫が舐めてしまう事故にも注意が必要です。
2つ目は、動物病院で処方されるものを基本にすること。市販品と動物病院の薬では、対象となる寄生虫の範囲や持続期間が異なります。体重に合った用量を選ぶ必要もあります。
3つ目は、いつまで続けるか。ノミは屋外では冬に活動が落ちますが、暖房の効いた室内では年間を通じて生存できます。地域にもよりますが、少なくとも11〜12月までは継続し、可能であれば通年というのが現在の一般的な考え方です。9月で止めてしまうと、いちばん多い時期の途中で切れることになります。
冒頭に書いたとおり、ノミの大半は猫の体ではなく室内にいます。卵、幼虫、さなぎの状態でカーペットの繊維の奥や畳の隙間、猫の寝床に潜んでいるため、猫だけを処置しても再び寄生されます。
効果的なのは次の3つです。
掃除機を毎日かける。とくに猫の寝床の周り、ソファの隙間、カーペット。振動がさなぎの羽化を促すため、掃除機は成虫を吸うだけでなく、潜んでいるものを表に出す役目もします。かけたあとの紙パックはすぐに密閉して捨ててください。
寝具・カバー類を60℃以上で洗う。猫のベッド、毛布、クッションカバーを高温で洗濯し、しっかり乾燥させます。コインランドリーの高温乾燥機も有効です。
猫が触れる場所に殺虫剤を使わない。人用の家庭用殺虫剤やくん煙剤には、猫に有害な成分を含むものがあります。使用する場合は猫を別室に移し、換気してから戻すなど、製品の注意書きに従ってください。
なお、ノミの寄生は皮膚炎だけでなく、瓜実条虫(サナダムシ)の媒介や、重度の場合は貧血につながることがあります。皮膚炎の治療や駆虫が長引くと通院が重なることもあるため、日ごろの備えを見直しておく機会にしてもよいかもしれません。
また、この時期は夏毛から冬毛への換毛期とも重なります。ブラッシングの頻度が上がるタイミングなので、そのついでにノミ取りコームを1回通す習慣にしておくと、発見が早くなります。
A. 人の衣類や荷物を介した持ち込みがあるため、外に出ない猫でも寄生の可能性はあります。とくに同居の犬がいる、ベランダに出る、家族が草地に行く機会があるといった条件がある場合は、予防を続ける意味が大きくなります。猫の生活環境を獣医師に伝えたうえで、必要性を相談してみてください。
A. 1匹見つかった時点で、室内に卵や幼虫が広がっていると考えるのが現実的です。市販品で自己処置する前に、動物病院で猫に合った駆除薬を処方してもらうほうが確実です。同時に、寝床の洗濯と毎日の掃除機がけを1か月ほど続けてください。同居の猫や犬がいる場合は、全頭まとめて処置する必要があります。
A. 引き抜くと口器が皮膚に残り、炎症や化膿の原因になることがあります。また、つぶすと病原体を含む体液が出るおそれがあります。動物病院で除去してもらってください。すぐに行けない場合も、そのままの状態で受診するのが安全です。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療方針、特定の薬剤の使用を推奨するものではありません。予防薬の選択と投与については、必ず動物病院で獣医師にご相談ください。
監修:Withねこ合同会社(第一アイペット損害保険代理店)