秋雨前線が停滞する時期は、じめじめした日が続きます。梅雨ほど話題にならないぶん対策が手薄になりがちですが、猫と暮らす室内では 梅雨より条件が悪くなることがあります。理由は単純で、冷房を止めるからです。この記事では、この時期特有の湿気が猫にどう影響するかと、優先順位をつけた対策をまとめます。
梅雨と秋雨で決定的に違うのが 冷房を使っているかどうかです。
| 梅雨(6〜7月) | 秋雨(9〜10月) | |
|---|---|---|
| 外気温 | 高い | 下がってくる |
| 外の湿度 | 高い | 高い |
| 冷房の使用 | 使う(=除湿される) | 止める |
| 窓を開けるか | 閉める | 開けやすい気温 |
| 結果として室内は | 意外と乾く | 湿気がこもる |
エアコンの冷房運転は、空気を冷やす過程で水分を取り除きます。つまり 冷房を使っている間は自動的に除湿されているということです。気温が下がって冷房を止めた瞬間、この除湿も止まります。外の湿度はまだ高いままなので、体感としては涼しいのに、湿度は上がるという状態になります。
加えて、この時期は窓を開けやすい気温です。換気自体は良いことですが、雨の日に開けると湿った空気が入ってきます。雨の日は閉めて除湿、晴れた日に開けて換気——この切り替えが基本になります。
対策の前に、いま何%なのかを知る必要があります。感覚では分かりません。
| 湿度 | 状態 |
|---|---|
| 40% 未満 | 乾燥気味。呼吸器への刺激、静電気 |
| 50〜60% | 目標帯。カビ・ダニが増えにくい |
| 60〜70% | カビが育ちやすくなる |
| 70% 以上 | ダニも活発化。要対策 |
湿度計を置くときのコツは 高さです。人の目線の高さに掛けても、猫が過ごす床付近の値は分かりません。湿った空気は下に溜まりやすいため、床上 30cm 前後——猫が寝ている場所の近くに置いてください。人の高さで 55% でも、床付近では 65% ということが起こります。
置く場所は最低 2 か所。猫の寝床の近くと フードを保管している場所です。この 2 か所が実際にトラブルが起きる場所だからです。
この時期に最も見落とされるのがフードです。ドライフードは湿気を吸います。吸った分だけ酸化が進み、カビの温床にもなります。
見分け方は次のとおりです。
対策は次の 4 点です。
開封後の使い切り期間は 1 か月以内が目安です。この時期は特に、大袋の買い置きより小袋を回すほうが安全です。詳しい手順は 夏のキャットフード保存|酸化と虫を防ぐにまとめています(夏向けの記事ですが、湿気対策の考え方は秋雨にもそのまま使えます)。
ウェットフードについては、開封後は冷蔵で 24 時間以内、出しっぱなしは 2 時間までを目安にしてください。気温が下がっても、湿度が高い環境では傷むまでの時間はあまり延びません。
猫が長時間過ごす布類は、体温と湿気がこもる場所です。ここがカビとダニの温床になります。
寝床そのものの選び方は 猫用ベッドの選び方|秋冬に向けた5基準を参照してください。この時期は 洗えるかどうかを優先して選ぶと後が楽になります。
湿度が高いと猫砂が固まりにくくなり、においも強くなります。そして猫は 汚れたトイレを我慢するため、排尿回数が減り、泌尿器のトラブルにつながることがあります。
猫砂の素材によっても差が出ます。紙系とおから系は湿気に弱く、鉱物系は比較的影響を受けにくい傾向があります。この時期だけ素材を変えるという選択肢もあります(猫砂の選び方 素材別メリット・デメリット)。
除湿機やエアコンの除湿運転が使えるなら、それが最も確実です。ただし機器がなくてもできることがあります。
猫がいる部屋でサーキュレーターを使うときは、直接風が当たり続けないようにしてください。特に寝床に向けて回しっぱなしにすると、体温を奪います。壁や天井に当てて間接的に循環させるのが安全です。
湿度が高い時期に増えやすい変化を挙げます。いずれも「湿気のせい」と決めつけず、続く場合は受診を検討してください。
この時期はノミ・マダニの活動も続いています。残暑から秋にかけてはピークにあたるため、予防薬の投与間隔を空けないでください(残暑のノミ・マダニ対策|9月がピーク)。
機器がない場合、効果が大きい順に手をつけるのが現実的です。第一に フードの保存。これは容器を 1 つ買うだけで解決し、費用も数千円で済みます。しかも猫の健康に直結します。開封後の袋を袋ごと密閉容器に入れる、これだけで湿気による劣化はかなり防げます。第二に 寝床の乾燥。晴れ間が出た日にベッドとブランケットを外に出す、それだけです。週 1 回でも効果があります。晴れない週が続くなら、コインランドリーの乾燥機を使う手もあります。第三に 空気を動かすこと。扇風機やサーキュレーターがあれば床付近に向けて回します。なければ、晴れた日に窓を 2 か所開けて風の通り道を作ってください。1 か所だけ開けても空気はほとんど動きません。第四に エアコンの除湿運転。除湿機はなくてもエアコンはある、という家は多いはずです。気温が下がってきた時期なら、冷房より除湿のほうが快適です。それでも湿度が下がらない場所には、市販の除湿剤を置いてください。クローゼット、押し入れ、シンク下といった閉じた空間には効きます。ただし 猫が舐めたり倒したりしない場所に置くことが前提です。塩化カルシウム系の除湿剤は、こぼれたものを舐めると危険です。
製品によって扱いが変わるため、一律に「大丈夫」とは言えません。判断の軸をお伝えします。まず 置き型の除湿剤(塩化カルシウム系)。溜まった液体は刺激性があり、舐めると危険です。猫が入れない閉じた空間(クローゼットの中、扉付きの収納)に限定し、倒される可能性のある床置きは避けてください。次に 防カビくん煙剤やスプレー。使用中と使用後しばらくは、猫を 別の部屋に移してください。使用後は十分に換気し、猫が舐める可能性のある床や壁は拭き取ってから戻します。製品の注意書きに「ペットを退避させる」旨の記載があれば、必ず従ってください。アロマオイル・精油を使った除湿・消臭は避けたほうが無難です。猫は一部の精油成分を代謝しにくいとされ、ティーツリーをはじめ危険性が指摘されているものがあります。加湿器やディフューザーでの拡散も同様です。最も安全なのは 物理的な方法です。換気、空気の循環、日光、乾燥機、そして除湿機。薬剤に頼らずに済むならそれが一番です。どうしても使う場合は、製品名を控えたうえで、使用前にかかりつけの動物病院に確認するのが確実です。
直接的な影響と、間接的な影響の両方があります。直接的なものとしては、体温調節がしにくくなることが挙げられます。猫は主に呼吸と足裏で熱を逃がしますが、湿度が高いと水分の蒸発が進みにくく、放熱の効率が落ちます。気温がそれほど高くなくても、湿度が高い日にぐったりしているように見えるのはこのためです。残暑と秋雨が重なる時期は、特に注意して観察してください。間接的なものとしては、環境中のカビ・ダニの増加による皮膚や呼吸器への影響、フードの劣化による消化器への影響、そして トイレを我慢することによる泌尿器への影響があります。実際に問題が起きやすいのは、こちらの間接的な経路のほうです。観察のポイントとしては、掻く回数、フケと毛艶、食欲、排尿の回数と量の 4 つを見ておいてください。いずれも日々の健康チェックで拾える項目です(猫の健康チェック|毎日30秒の5か所)。そのうえで、湿度のせいだと決めつけないことが重要です。秋は寒暖差も大きく、日照時間の変化もあり、体調に影響しうる要因が重なります。変化が数日以上続く場合は、湿度対策と並行して受診を検討してください。
秋雨の時期は、冷房を止めることで除湿も止まるため、体感より室内の湿度が上がります。梅雨より条件が悪くなる家は珍しくありません。
目標は 50〜60%。まず湿度計を 床上 30cm、猫の寝床の近くに置いて、実際の数字を見てください。人の目線の高さとは 10% 前後ずれることがあります。
手をつける順番は、①フードを密閉容器へ ②寝床を晴れた日に干す ③トイレ掃除を 1 日 2 回に ④晴れた日は窓を 2 か所開ける。除湿機がなくても、この 4 つで大半はカバーできます。特にフードの保存は、容器 1 つで解決して効果が大きい——ここから始めてください。
監修:Withねこ合同会社
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の診断・治療や製品を推奨するものではありません。適切な湿度や環境条件は、住環境・地域・個体によって異なります。皮膚や呼吸器の症状が続く場合は、かかりつけの動物病院にご相談ください。除湿剤・防カビ剤等を使用する際は、必ず製品の注意書きに従ってください。