この記事の要点
9月から11月にかけて、家の中で虫を見かける機会が増えます。理由はシンプルで、屋外の気温が下がり、越冬場所を探した虫が暖かい建物へ移動してくるためです。とくに日当たりの良い南面・西面の壁や、洗濯物、網戸のわずかな隙間から入り込みます。
この時期に室内でよく見かけるのは、カメムシ、コオロギ、クモ、ガ、テントウムシ、カマドウマ、ハエ、ムカデといった面々です。猫にとっては動く獲物そのものなので、見つければ高い確率で追いかけます。
まず前提として、猫が虫を捕まえて食べること自体は、多くの場合そこまで心配のいらない行動です。狩りは猫の正常な行動で、消化管も昆虫のタンパク質を扱えます。問題になるのは「どの虫か」と「何がかかっていたか」です。
秋に最も相談が多いのがカメムシです。危険性は毒よりも刺激性の分泌液にあります。猫が噛んだ瞬間に強烈な液が出るため、口の中や目の粘膜に付くと痛みや炎症が起きることがあります。
典型的な流れは、猫が噛む → 強烈な匂いと味に驚く → 口をこすったり、よだれを大量に出したり、口をパクパクさせる、というものです。多くは15〜30分程度で落ち着きますが、次の場合は動物病院に相談してください。
応急処置としては、顔を無理に洗わないことが重要です。人が慌てて水をかけると、液が目に流れ込むことがあります。まず新鮮な水を飲める状態にして、口を自分ですすげるようにしてあげてください。
これらは食べても大きな問題になりにくい種類です。ただし硬い外骨格(コオロギやカマキリの脚など)が消化管を刺激して、一時的な嘔吐や下痢が起きることがあります。1回吐いて元気なら様子を見て構いませんが、繰り返すようなら受診を検討してください。
また、屋外の昆虫は寄生虫の中間宿主になっていることがあります。日常的に虫を食べる環境なら、定期的な駆虫について獣医師に相談しておくと安心です。
食べることより、猫が刺される・咬まれることのほうが問題です。前足や口の周りが腫れ、痛がって足を上げる、顔が急にふくらむ、といった変化が出ます。
ハチに刺された場合、まれにアレルギー反応が急速に進むことがあります。刺された直後から呼吸が荒い、ぐったりする、歯ぐきが白いといった様子があれば、時間を置かずに受診してください。ムカデも咬まれると強い痛みと腫れが出ます。
実は最も注意すべきなのがこれです。殺虫スプレーで弱った虫を猫が食べるケースは、秋にしばしば起こります。薬剤が虫の体表と体内に残っているため、猫は薬剤ごと口にすることになります。
猫は一部の薬剤成分を代謝しにくいとされ、犬向け・室内向けの製品でも猫では注意が必要なものがあります。スプレーを使ったら、虫の死骸は猫より先に必ず回収してください。殺虫剤の選び方は猫のいる家の虫対策|殺虫剤の安全な使い方で詳しく整理しています。
2時間経って普段どおりなら、まず問題ないと考えてよい場面が多いです。判断の分かれ目になるのは、嘔吐の回数と、口や顔の腫れの有無です。
誤飲・中毒が疑われる場合にかかる費用の目安は猫の誤飲・中毒|治療費の目安、嘔吐が続く場合は猫が吐くときの治療費にまとめています。夜間救急にかかると診療費が割増になることが多く、思ったより負担が大きくなることがあります。突発的な出費への備えを考えておくのも一つの方法です。ペット保険「うちの子」の詳細を見る
対処より予防のほうが確実です。9月中にやっておくと効果が高いのは次の5つです。
それでも入ってきた虫は、殺虫剤ではなくコップと紙で捕獲して外に出すのが、猫のいる家では最も安全な方法です。カメムシは刺激すると分泌液を出すので、そっと覆ってゆっくり動かしてください。
虫を追う行動は、猫にとって質の高い運動であり、狩猟本能を満たす時間でもあります。危険な種類でなければ、無理に止める必要はありません。
ただし、高い場所の虫を追ってカーテンレールや窓枠に飛び乗るのは落下事故につながることがあります。とくに窓を開けている時期は、網戸を突き破ってしまう例もあります。網戸ストッパーや補強フィルムを併用しておくと安心です。
虫を追いかける衝動が強い猫は、狩りの欲求が満たされていないサインでもあります。1日5〜10分、猫じゃらしで「追う→捕まえる→噛む」まで完結させる遊びを入れておくと、虫への執着が和らぐことがあります。
多くの場合、よだれや口をこする様子は15〜30分ほどで落ち着き、そのまま問題なく経過します。まずは新鮮な水を用意して2時間ほど様子を見てください。ただし、30分を超えても口を気にし続ける、目を痛がる、嘔吐が2回以上続く、顔が腫れてきた場合は受診をおすすめします。判断に迷うときは、かかりつけに電話で相談するのが確実です。
屋外の虫を日常的に食べる環境でなければ、無理にやめさせる必要はありません。ただし寄生虫や殺虫剤のリスクがあるため、家の中に虫を入れない対策と、定期的な駆虫の相談はしておくと安心です。しつけで止めるより、侵入経路を塞ぐほうが現実的です。
物理的な遮断(網戸の隙間対策、すきまテープ、ドレンホースのキャップ)が最も安全で確実です。忌避剤や殺虫剤を使う場合は、必ず製品の表示でペットのいる環境での使用可否を確認し、使用中と乾くまでの間は猫を別の部屋に移してください。薬剤がかかった虫の死骸は、猫が触れる前に回収します。ハーブ系やアロマ由来の製品も、猫では成分によって注意が必要なため、事前に獣医師へ確認することをおすすめします。
秋に猫が虫を捕まえるのは自然なことで、多くの場合は大きな問題になりません。気をつけたいのはカメムシの分泌液、ムカデやハチに刺されること、そして殺虫剤がかかった虫の3つです。
食べてしまったら、虫を特定し、口と目を確認し、2時間観察する。この3ステップで判断できます。そして最も効果があるのは、9月のうちに網戸とドレンホースの隙間を塞いでおくことです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を目的とするものではありません。症状の判断や治療方針は必ずかかりつけの獣医師にご相談ください。
監修・作成:Withねこ合同会社(第一アイペット損害保険株式会社 代理店)