9 月に入ると「最近よく寝るようになった」「急に毛が抜ける」「夜中に走り回る時間が変わった」と感じることがあります。気温が下がったからだと思われがちですが、猫の体が反応しているのは 気温よりも光です。完全室内飼いでも窓から入る自然光でこの変化は起こります。この記事では、秋の日照変化が猫に何をもたらすのか、そして飼い主が何を調整すればよいのかを整理します。
日照時間は 1 年を通じて一定のペースで変わるわけではありません。変化の速度が最も速いのは春分と秋分の前後です。東京を例にすると、9 月の 1 か月間で日の入りは約 50 分早まり、日の出は約 20 分遅くなります。合計すると、8 月末と 9 月末では 明るい時間が 1 時間以上短くなる計算です。
| 時期 | おおよその日照時間(東京) | 猫の体に起きること |
|---|---|---|
| 6 月下旬(夏至前後) | 約 14 時間 35 分 | 換毛は落ち着き、活動量は多い |
| 8 月下旬 | 約 12 時間 50 分 | 変化の始まり。抜け毛が増え始める |
| 9 月下旬(秋分前後) | 約 12 時間 | 換毛が本格化。食欲が上がる |
| 11 月下旬 | 約 10 時間 | 冬毛が生えそろい、睡眠時間が延びる |
猫の脳は目から入る光の量を手がかりに、体内でメラトニンという物質の分泌リズムを調整しています。暗い時間が長くなるとメラトニンの分泌時間が延び、それが 毛の生え変わり・食欲・活動リズムに影響していると考えられています。つまり、猫にとっての「秋が来た」は寒さではなく、暗さの合図です。
ここで大事なのが、完全室内飼いでもこの変化は起きるということです。窓から入る自然光だけで十分に季節の情報は伝わります。一方で、遮光カーテンを閉めきった部屋で終日照明をつけている環境では、この信号が弱まり、換毛のタイミングがずれたり、通年で少しずつ抜け続ける状態になることがあります。
夏毛から冬毛への生え変わりが始まります。春の換毛(冬毛を捨てる)に比べると量は控えめですが、期間は長く、10 月いっぱい続くことがあります。長毛種では特に毛玉ができやすくなる時期です。
この時期に増えるのが 毛玉を吐く回数です。グルーミングで飲み込む毛の量が増えるためで、月に 1〜2 回程度、毛の混じったものを吐くのは多くの場合問題になりません。ただし 週に何度も吐く、吐こうとして出ない、食欲が落ちているという場合は別の背景を考える必要があります。換毛期の抜け毛対策は 残暑の換毛期|夏毛から冬毛への抜け毛対策にまとめています。
秋に食欲が上がるのは、冬に向けて体に蓄えを作ろうとする自然な反応だと考えられています。問題は、室内飼いの猫には冬の飢餓が来ないことです。本能に従って食べ続ければ、そのまま体重増加につながります。
目安として、1 か月で体重の 5% を超える増加があれば調整を検討してください。4 kg の猫なら 200 g、5 kg なら 250 g です。「秋だから多少は仕方ない」で 3 か月続けると、冬になる頃には無視できない差になります。
調整の仕方は、量を一気に減らすのではなく 1 回の量を少し減らして回数を増やすのが現実的です。満腹感を保ちながら総量を抑えられます。
猫は本来 薄明薄暮性——夜明けと夕暮れに最も活発になる動物です。日の出と日の入りが動くということは、猫の活動のピークも動くということになります。
夏は朝 4 時台に起こしに来ていた子が、秋になると 5 時台にずれる。夕方の運動会が 19 時から 18 時に前倒しになる。こうした変化は生理的なもので、猫の側に問題があるわけではありません。ただし飼い主の生活リズムは変わらないため、ずれが「困りごと」として現れることがあります。
対策は、遊びの時間を意図的に固定することです。夕方から夜にかけて 10〜15 分、しっかり動く遊びを入れて、そのあとに食事を出す。狩り→食事→毛づくろい→睡眠という自然な流れを作ると、夜間の活動が落ち着きやすくなります。
成猫は 1 日 12〜16 時間眠るとされますが、秋から冬にかけては これがさらに 1〜2 時間延びることがあります。日照が減り、気温が下がることで、動く必要性が下がるためです。
ここは判断が難しいところで、季節性の眠さと 体調不良によるだるさは見た目が似ています。切り分けの手がかりは、起きているときの様子です。呼べば反応する、食事には普通に来る、遊びに誘えば乗ってくる——であれば季節性の可能性が高い。逆に、起きても動きが鈍い、食事に興味を示さない、隠れる場所が増えたなら、季節では説明しにくい変化です。
あわせて、朝晩の気温差が出てくる時期でもあります。日中は暖かくても、明け方に冷え込む日が増えます。寒暖差そのものへの対策は 朝晩の寒暖差と猫の体調|初秋の対策を参考にしてください。
次のような場合は、秋の生理的な変化とは切り分けて考えたほうがよい状態です。
特に 「食べているのに痩せる」と 「水を飲む量が増えた」は、季節では説明のつかない変化です。秋のせいにして数か月見送るより、一度血液検査を受けておくほうが結果的に負担が小さくなります。
室内照明の明るさは、屋外の自然光と比べると桁違いに弱いのが実情です。晴天の屋外は数万ルクスに達しますが、一般的な室内照明は数百ルクス程度にとどまります。そのため、照明をつけていても、窓から自然光が入っていれば季節の信号は伝わります。問題になりやすいのは、遮光カーテンを常時閉めきっていて自然光がほとんど入らない環境と、深夜まで煌々と照明がついている環境の組み合わせです。この状態が続くと季節の切り替えがはっきりせず、換毛が通年でだらだら続く、活動リズムが不規則になるといったことが起こり得ます。対策は難しくありません。朝はカーテンを開けて自然光を入れ、夜は就寝前に照明を落とす。この 2 つで十分です。特に猫が長時間過ごす部屋の窓を確保できると効果的です。留守が多い家庭では、タイマー式のカーテンや照明を使って明暗のリズムを作る方法もあります。
活動のピークがずれることで 夜間の要求が目立つようになることは確かにあります。夕暮れが早まると、猫にとっての「活動時間」も前倒しになり、飼い主が寝る時間帯にエネルギーが余っている状態が生まれやすくなります。この場合は、夕方に 10〜15 分しっかり遊んでから食事を出す流れを作ると落ち着くことが多いです。ただし、夜鳴きには季節以外の原因も多くあります。特に シニア猫で急に夜鳴きが始まった場合は、甲状腺の問題、高血圧、認知機能の変化、痛み、目や耳の機能低下による不安など、確認したほうがよい背景がいくつもあります。「秋だから」で片付けず、いつから、何時ごろ、どんな声で、どこで鳴くかを数日メモしてみてください。パターンが見えると原因の見当がつきやすくなります。若い猫の遊び不足による夜鳴きと、シニア猫の不安による夜鳴きは、対応がまったく違います。
個体差はありますが、おおむね 8 月下旬から始まり、10 月いっぱい、長ければ 11 月前半まで続きます。春の換毛期(3〜5 月)に比べると抜ける量は少なめですが、期間はむしろ長くなる傾向があります。「短くする」というより、飲み込む毛の量を減らすという発想が現実的です。有効なのはブラッシングの頻度を上げることで、短毛種なら毎日 3〜5 分、長毛種なら朝晩 2 回を目安にします。ラバーブラシで浮いた毛を集めてから、コームで根元の抜け毛を取る、という順番だと効率がよくなります。ただし力を入れすぎると皮膚を傷つけるため、あくまで軽い力で。あわせて、抜け毛が舞う環境を減らすことも効きます。空気清浄機のフィルター清掃、猫が寝る場所のカバーをこまめに洗う、掃除機を毛が浮きにくい朝のうちにかける、といった対応です。なお、特定の場所だけ左右対称に毛が薄くなるのは換毛とは異なる現象なので、その場合は受診を検討してください。
9 月の猫の変化は、寒さではなく 光の減り方が引き金になっています。1 か月で明るい時間が 1 時間以上短くなるこの時期、換毛が本格化し、食欲が上がり、活動のピークがずれ、睡眠が延びる。どれも自然な反応です。
飼い主がやることは、朝にカーテンを開け、夜に照明を落とし、ブラッシングを増やし、体重を月 1 回測る。この 4 つを 9 月から 11 月まで続けるだけで、秋の変化のほとんどは穏やかに通り過ぎます。そのうえで、食べているのに痩せると 水を飲む量が増えたの 2 つだけは季節のせいにしないでください。そこが季節変化と体調変化の分かれ目になります。
監修:Withねこ合同会社(第一アイペット損害保険株式会社 代理店)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。体重・食欲・飲水量の変化が続く場合は、必ず動物病院を受診してください。