「シンクの水は飲んでいたのに、最近そこで飲まなくなった」「置いてある水にはまったく口をつけない」——猫の飲水にまつわる相談は、フードの相談と同じくらいよく届きます。猫はもともと乾燥した地域に起源を持ち、少ない水で生きられるように出来ている一方、その体質が腎臓や尿路への負担につながりやすいとも言われます。ここでは、フードや給水器を買い替える前にできる 「置き方の見直し」 を、具体的な数字で整理します。
猫が1日に必要とする水分量は、体重1kgあたりおよそ45〜50mlが目安とされます。
| 体重 | 1日に必要な水分(目安) |
|---|---|
| 3kg | 約135〜150ml |
| 4kg | 約180〜200ml |
| 5kg | 約225〜250ml |
| 6kg | 約270〜300ml |
ここで大事なのが、この量をすべて「水を飲んで」取る必要はない という点です。ウェットフードは重量の70〜80%が水分なので、1日に100gのウェットを食べていれば70〜80mlはそこから取れています。逆にドライフード中心(水分10%前後)の場合は、ほとんどを飲水で補うことになります。
「うちの子は水を飲まない」と感じている場合、まず確認したいのは 食事から取れている水分量 です。ウェット中心の子なら、器の水が減っていなくても問題ないケースがよくあります。
置き方の見直しで最も効果が出やすいのが、単純に 数を増やすこと です。
理由は3つあります。第一に、猫は「移動のついでに飲む」動物で、通り道にあるかどうかで回数が変わります。第二に、多頭飼いでは強い立場の猫が水場を占有し、他の子が近づけていないことがあります。第三に、1か所だと汚れたときに飲む場所がゼロになります。
置き場所は、猫が1日のうちによくいる場所を思い浮かべて、その動線上に配置する のがコツです。寝床の近く、窓際の定位置の近く、廊下の途中、といった具合です。
逆に、次の場所は飲水量が落ちやすい配置です。
「シンクでは飲むのに器では飲まない」という子は、流れる水が好きという以前に、その場所が落ち着くという理由であることも少なくありません。シンクの近くの床に一つ増やしてみると、そのまま移行できることがあります。
器そのものにも、飲みやすさを左右する要素があります。
自動給水器を検討している場合は、猫の自動給水器 選び方と比較 でタイプ別の違いをまとめています。ただし、給水器を買う前に上の「数を増やす・場所を変える」を試すほうが、費用をかけずに効果が出ることが多くあります。
暑い時期の脱水サインの見分け方は 夏の猫の脱水サイン — 水を飲ませる工夫 に詳しくまとめています。
ここまでは飲まない場合の話でしたが、逆に急に飲む量が増えたときのほうが、注意が必要なことがあります。
これらが重なる場合、腎臓や内分泌に関わる病気の可能性が考えられます。判断のためには、まず 実際の飲水量を測る のが有効です。朝に計量カップで200ml入れ、翌朝に残りを測って差を出す。これを3日続ければ、1日あたりのおおよその量が分かります。多頭飼いの場合は、一時的に部屋を分けて測ると個体別の数字が取れます。
受診の際は、その数字をそのまま伝えてください。「なんとなく増えた気がする」より、「1日400ml飲んでいる」のほうが、判断材料としてはるかに有用です。
日本の水道水は軟水で、猫に与えて問題ないとされています。市販のミネラルウォーターを使う場合は、硬水は避けて軟水を選ぶ のが一般的な考え方です。硬水に多く含まれるミネラルが尿路への負担になる可能性が指摘されているためです。特別な事情がなければ、水道水で十分です。
夏場は半日、それ以外の季節でも1日1回以上の交換をおすすめします。ホコリや被毛が浮くだけでなく、器の内側にぬめりが出ると飲まなくなる子がいます。交換のときに器をスポンジで洗うところまでを1セットにすると習慣化しやすくなります。
流れる水を好む子には効果がありますが、モーター音を嫌って近づかなくなる子もいます。導入するなら、既存の器を撤去せず、追加する形で始めてください。どちらも置いておけば猫が選びますし、給水器が合わなかった場合の逃げ道も残ります。また、給水器はフィルターとポンプの清掃を怠ると急速に不衛生になるため、手入れの手間を含めて検討するのが現実的です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、獣医学的な診断・治療を保証するものではありません。愛猫の状態が気になる場合は、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。