この記事の要点
換毛期に入ると、長毛の猫やアンダーコートの多い子では、脇の下や内股にフェルトのように固まった毛のかたまりができはじめます。これが毛玉(マット)です。見つけた瞬間に引っ張って取りたくなりますが、その一手が最もやってはいけない対応です。この記事では、痛がらせずに毛玉をほどく手順と、家庭でやめるべき境界線を整理します。
毛玉は、抜けた毛が生えている毛に絡まり、湿気と皮脂で固まったものです。厄介なのは、毛玉の内側の毛は根元まで皮膚とつながっている点です。かたまりを引っ張ると、皮膚がテントのように持ち上がります。猫にとっては、髪の毛を一房まとめて引っ張られるのと同じ感覚です。
さらに毛玉の下の皮膚は、通気が悪く蒸れているため弱くなっています。無理に引くと、毛玉が取れると同時に薄い皮膚が裂けることがあります。実際、ブラッシング中に皮膚を傷つけてしまったという相談は珍しくありません。力加減の考え方は ブラッシングで猫の肌を傷つけない力加減 にまとめています。
もうひとつの代償が信頼の失い方です。ブラシで一度強い痛みを経験した猫は、ブラシを見ただけで逃げるようになります。毛玉を1つ取るために、この先何年ものケアを失うのは割に合いません。
毛玉は「動きが多く、擦れて、猫が自分で毛づくろいしにくい場所」にできます。
週1回、抱っこのついでにこの5か所を指で撫でて確認します。目で見るより、指の腹で触るほうが小さなしこりに気づけます。触って「小豆ほどの硬さ」を感じたら、それが毛玉の始まりです。
食後のうとうとしている時間帯が向いています。遊びの直後や、猫が何かを警戒しているときは避けます。
ここが最重要です。毛玉と皮膚のあいだに、親指と人差し指で「土台」を作ります。この固定があると、毛先をどう動かしても皮膚が引っ張られません。指の位置は毛玉の根元、皮膚のすぐ上です。
根元からではなく、毛玉の外側・毛先の側から取りかかります。目の粗いコームの先端を数本の毛に入れ、そっと外側へ引きます。一度に全体を動かそうとせず、数本ずつ、外周から削っていくイメージです。
ある程度硬い毛玉は、いきなり梳かそうとしても歯が入りません。まず指かコームの先で、毛玉を縦方向に2〜3個に割ってから、それぞれをほぐします。割る作業も根元を固定したまま行います。
途中でも5分で切り上げます。猫の集中力より、飼い主の「あと少しで取れそう」という気持ちのほうが先に暴走するためです。中サイズの毛玉なら、3〜4日に分けて崩す前提で臨みます。
毛玉が取れたかどうかに関係なく、終わりにおやつを出します。「ブラシの時間=良いことがある時間」という結びつけを維持するためです。
ブラシ自体を嫌がる子への慣らし方は 猫がブラッシングを嫌がる|慣らし方6手順 にまとめています。毛玉ケアの前に、まず触らせてもらえる関係を作るほうが近道です。
次のいずれかに当てはまるときは、家庭でのケアを中止してください。
この場合はバリカンでの刈り取りが最も安全で早い解決策です。皮膚に問題がなければトリミングサロン、皮膚に炎症がある場合は動物病院になります。部分的な毛玉のバリカン処理は 3,000〜8,000 円程度が目安で、全身の刈り込みや鎮静が必要な場合はさらに費用がかかります。皮膚の治療が必要な場合は、皮膚検査+内服薬+薬用シャンプーで 15,000〜25,000 円程度が目安のレンジです。
出典:治療費部分は、日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査」および PETPETLIFE 治療費データをもとに Withねこが整理した参考レンジです。金額は施設・地域・状態によって変動します。
毛艶やフケの変化は、毛玉のできやすさとも関係します。日々の観察のポイントは 猫のフケ・毛艶で分かる健康サイン が参考になります。
家庭では使わないでください。毛玉の下の皮膚は毛に引っ張られてテントのように持ち上がっており、毛だけを切っているつもりで皮膚を切ってしまう事故が多く起きています。切るのであればバリカンを使い、それも自信がない場合はサロンや動物病院に任せるのが安全です。
大きさより「硬さ」と「皮膚の状態」で判断してください。指でつまんで少しでも動く柔らかさがあり、下の皮膚が正常な色なら家庭で対応できる範囲です。動かず板のようになっている、皮膚が赤い、といった場合はプロに任せます。
被毛のコンディションを整える栄養は存在しますが、毛玉そのものを防ぐ食品はありません。毛玉は物理的に絡まってできるものなので、対策はブラッシングの頻度と乾燥の徹底が中心になります。なお「毛玉ケア」と表示されたフードの多くは、飲み込んだ毛の排出を助けるもので、体表の毛玉とは別の話です。
毛玉のケアで結果を分けるのは、道具でも根気でもなく「根元を指で押さえたかどうか」です。この一手があるだけで、猫が感じる痛みは大きく変わります。毛先から少しずつ、1回5分、数日かけて崩す。そして硬く板状になったものや、皮膚に赤みがあるものは迷わずプロに任せる。週1回、脇の下と内股を指で撫でる習慣が、そもそも毛玉を作らない最短ルートです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を目的とするものではありません。皮膚に赤み・傷・臭いがある場合は必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。掲載している費用は参考レンジであり、実際の金額をお約束するものではありません。