目やにが続いている、片目をしょぼしょぼさせている。動物病院で目薬を処方され、家に帰ってきて最初の 1 回目——ここでつまずく飼い主はとても多いものです。顔を背けられ、前足で払われ、逃げられる。2 日目には猫が薬の箱を見ただけで隠れるようになる。目薬は「毎日 2〜3 回、1〜2 週間」という形で処方されることが多く、初回のやり方が残りの期間全体を左右します。この記事では、嫌がる猫でも短時間で終わらせるための手順を、失敗しやすい点とあわせて整理します。
猫を保定してから容器のキャップを開ける——これが最大の失敗要因です。片手がふさがった状態でキャップを回している間に、猫は逃げる体勢を作ります。キャップを外し、持ちやすい向きで机に置いてから猫を迎えに行ってください。
床よりも、テーブルやカウンターの上のほうが安定します。高い場所では猫の動きが慎重になり、後ずさりの距離も限られます。滑るとかえって暴れるため、下にバスタオルを 1 枚敷いてください。
猫が 寝起きでぼんやりしているとき、あるいは ごはんの直前が狙い目です。逆に、遊んで興奮している直後は最も難しくなります。捕まえて連れてくるのではなく、猫がいる場所へこちらが行くほうが抵抗は小さくなります。
正面から手を伸ばすと、猫は近づいてくる指を見て反射的に目を閉じます。猫を自分の体の前に置き、同じ方向を向かせる——つまり、猫の背後から抱えるような位置関係を作ってください。壁や自分の体で後ろ側を塞ぐと、後ずさりも止まります。
利き手ではないほうの手を あごの下に添え、ゆっくり上に向けます。強く固定する必要はありません。角度は やや上を向く程度で十分です。頭を大きくのけぞらせると猫は嫌がるため、目の表面が水平に近くなればそれで足ります。
ここが最も重要な点です。容器を猫の視界に入れない。あごを支えている手の指で 上まぶたを軽く持ち上げながら、頭の上を通す形で容器を目の真上に運びます。猫から見て「上から何かが来る」状態にはなりますが、正面から迫るよりはるかに反応が小さくなります。
目の表面から 1〜2 センチ離した位置で 1 滴。容器の先が目やまつげに触れると、猫が驚くだけでなく、薬液が汚染される原因にもなります。量は 1 滴で十分です。猫の目に保持できる量は限られており、それ以上入れても流れ出るだけになります。
入ったら その場で解放してください。「ちゃんと入ったか確認する」ために押さえ続けるのが、次回以降を難しくする最大の要因です。目に入れば猫はまばたきをして薬を目の表面に広げます。確認は不要です。解放してすぐ、おやつを 1 粒。これを毎回続けると、数日で猫の側の身構え方が変わってきます。
| やりがちなこと | 何が起きるか | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 正面から容器を近づける | 目を固く閉じる。次回から逃げる | 後ろ側・頭の上から近づける |
| 体を強く押さえ込む | 抵抗が強くなり、時間がかかる | あごを支えるだけ。3 秒で終える |
| 入るまで何度も試す | 猫の学習が「目薬=長い拘束」になる | 2 回失敗したら中断。30 分あける |
| 2 種類を続けてさす | 先の薬が流れ出る | 5 分以上あける |
| あふれた薬を放置する | 目の周りの毛が固まる・皮膚が荒れる | 清潔なコットンで目尻から外へ拭く |
| タオルで全身をぐるぐる巻く | 暴れる子ではかえって興奮する | まず巻かずに試す。必要な子だけ使う |
3 行目は特に重要です。失敗した回数だけ、次回の難易度が上がります。1 回で入らなくても構いません。いったん解放して 30 分後に再挑戦するほうが、通算では早く終わります。
処方される目薬にはいくつかのタイプがあり、扱い方が少し変わります。
| タイプ | 見た目・感触 | 扱いのポイント |
|---|---|---|
| 水性の点眼薬 | さらさらした透明の液体 | 最も流れやすい。複数使うときは最初に |
| 懸濁性の点眼薬 | 白く濁っている | 使う前に軽く振る。水性のあとに使う |
| 眼軟膏 | チューブ入りの軟らかい軟膏 | 最後に使う。下まぶたの内側に少量置く |
眼軟膏は、まぶたの内側に置いたあと 猫がまばたきをすることで自然に広がります。指で伸ばす必要はありません。冷蔵保存の指示がある薬は、使う 5 分前に出して常温に近づけると、冷たさによる驚きを減らせます。
飲み薬も併用している場合は 猫に薬を飲ませるコツ — 錠剤と液剤と合わせて、1 日の順番を先に紙に書き出しておくと迷いません。
2〜3 日試して手応えがない場合、無理を続ける必要はありません。次の順で検討してください。
4 つめは遠慮する必要のない相談です。「家でさせなかった」ことを伝えるのは、治療の失敗ではなく重要な情報になります。実際に入っていない状態で通院を続けると、効いていない理由が分からなくなるためです。
目薬が必要になってから慣らすのでは間に合いません。健康なうちにできる準備が 2 つあります。
2 つめは日常の観察も兼ねます。目やにの量や色の変化に早く気づけるようになると、受診の判断が早まります(猫の目やにの治療費はいくら?症状別の目安と受診の判断)。爪切りやブラッシングと同じで、「何もない日に触る」時間の積み重ねが、いざというときの差になります(猫の爪切り 嫌がる子への慣らし方)。
基本的には さし直さないでください。判断の目安は「1 滴落とした直後に猫がまばたきをしたか」と「目のまわりが濡れているか」の 2 点です。まばたきをして目頭のあたりが湿っていれば、量として十分入っています。猫の目が一度に保持できる薬液の量は限られており、多く入れても余った分は目頭から鼻へ抜けるか、外へこぼれるだけです。むしろ心配なのは 入れ直しのために保定時間が延びることで、これが次回以降の難易度を確実に上げます。明らかに顔を振られて液が頬に飛んだ、容器を押した感触がなかった——というように「入っていない」と確信できる場合だけ、いったん解放して 30 分以上あけてから再挑戦してください。連続で試すと、猫の側で「目薬=逃げ続ける時間」という学習が固まります。なお、1 日 3 回の指示で 1 回失敗した程度で治療効果が大きく損なわれることは通常ありません。判断に迷う日が続く場合は、次の通院でそのまま伝えてください。
直後に数回まばたきをしたり、軽く顔を洗う仕草をしたりするのは よく見られる反応です。薬液が目の表面に広がるときの違和感によるもので、多くは 1 分ほどで落ち着きます。注意したいのは、その後も こすり続ける場合です。前足で強くこする、床や家具に顔をこすりつける、目を開けられない——という状態が 10 分以上続く、あるいは点眼のたびに毎回同じことが起きるなら、薬の刺激が合っていない可能性を含めて相談する価値があります。こすり続けること自体が目の表面を傷つける原因になるため、その場では おやつや遊びで気をそらすのが有効です。エリザベスカラーを処方されている場合は、点眼後 10 分ほどは外さずにおくと安全です。また、目のまわりに垂れた薬をそのままにすると皮膚が荒れることがあるため、清潔なコットンで目尻から外側へ、片目につき 1 枚を使い分けて軽く拭き取ってください。
原則は 「5 分以上あける」と 「さらさらしたものから先に」の 2 つです。続けてさすと、あとの薬が先の薬を洗い流してしまい、どちらも十分に働きません。順番の一般的な考え方は、水のようにさらさらした透明の点眼薬 → 白く濁った懸濁性の点眼薬 → チューブ入りの眼軟膏、という並びです。軟膏は目の表面に長く留まる性質があるため、先に使うとあとの液体が入らなくなります。実際の指示は薬の組み合わせによって変わるので、処方時に 「どちらを先にさすか」を必ず確認してください。聞きそびれた場合は、電話で確認して構いません。運用のコツとしては、5 分の間隔を待つあいだに猫を解放してしまうことです。押さえたまま待つと猫の負担が大きく、2 剤目で強く抵抗されます。1 剤目を入れたら褒めて解放し、5 分後にもう一度呼ぶ——このリズムのほうが、通算の所要時間は短くなります。1 日の投薬スケジュールを紙に書いて冷蔵庫に貼っておくと、家族間の重複や抜けも防げます。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療を目的とするものではありません。処方された薬の使い方・回数・期間は、必ずかかりつけの獣医師の指示に従ってください。
監修:Withねこ合同会社(第一アイペット損害保険代理店)